つわり・安産

「つわり」は病気ではありませんが妊娠をされた方が3~4カ月頃に吐き気を始めとした様々な症状が出る事をいいます。

具体的には『吐き気・匂いを嗅いだだけで気分が悪くなる・食べ続ける・胃もたれ・激しい頭痛・便秘・下痢・眠気が取れない・精神的に落ち込む』などがありその程度も、全く症状の出ない軽い方から出産の直前までずっ続く重い方まで人それぞれです。

 

現在、原因として考えられているのは、

●黄体ホルモンやゴナドトロピンが妊娠3カ月頃から大量に分泌されるために、身体が急激な変化についていけない

●胎盤が未成熟なので母体が胎児を異物だと認識してアレルギー反応をおこしている

●自律神経のバランスが崩れて副交感神経の異常緊張になっている

●流産を防ぐために母体が動きすぎないようにするため 

●毒素となる食べ物を体内から排出するため

などなど、色んな仮説がありますがハッキリとしたことは分かっていません。

また同じ女性でも一人目の出産と二人目の出産で症状が全く違うことも多いのです。このように『生命の神秘』は医学ではまだまだ解明できないことがたくさんあるようです。

 

しかし「つわり」は出産を経験された多くの女性の方が乗り越えてこられたことですし、先人たちもそのことについては多くの研究をしてきました。

 

次に、東洋医学では妊娠・出産をどのように考えているかを紹介します。

 

『脈経』という書物には妊娠をすると十二の経絡が胎児を養うと説明しています。簡単に述べると

『1ヶ月目:肝経  2ヶ月目:胆経  3ヶ月目:心包経  4ヶ月目:三焦経

 5ヶ月目:脾経  6ヶ月目:胃経  7ヶ月目:肺経    8ヶ月目:大腸経

 9ヶ月目:腎経  10ヶ月目:膀胱経

 心経と小腸経は、妊娠前の月経と産後の母乳に関係している。』

ということが書いてあります。これは現実的にも符合していてたとえば、妊娠をするためには「肝経」がしっかりしていなければいけません。

5ヶ月目の「脾」が働くころに妊婦さんは食欲旺盛になりやすいです。

出産時には「膀胱経」が関わるために難産や逆子には「至陰のお灸」が良く効きます。

また、産後の乳汁不足の時には「小腸経」の流れである肩~肩甲骨周りをほぐすことで乳腺の詰りが取れてどんどん母乳が出てきます。

 

では、「つわり」や「不妊・難産」はなぜ起こるのでしょうか?

 

「つわり」

 妊娠をすると母体に内熱が多くなります、その熱が妊娠3~4カ月頃の心包・三焦の経絡が働いて最も熱が多くなる時期と合わさると、上焦に熱が昇って心包に熱がこもると嘔吐する、といわれています。これは痰飲(※1)の多い人がなりやすく、脾虚陰虚熱証という証になります。

 (1 痰飲とは体内に余分な水分が溜まり、それが熱を持ったり冷えたりし人体に様々な症状を引き起こす原因となる物である)

 

「不妊・難産」

 上にも書いてありますが、妊娠するためには「肝」がしっかりしていなければなりません。肝は血を蔵し子宮・生殖器を統括しているところです。そのため体質的に肝が弱い人や冷え症の人、ストレス・過労で血を消耗している人・普段から薄着をしてたりアルコールや冷たい飲み物でお腹を冷や 

している方は不妊になりやすく流産もしやすくなります。これは肝虚陽虚寒証という証です。

 

それぞれの証でのツボ療法を以下に掲載していますので参考にしてください。

 

   ~参考文献~

      『日本鍼灸医学 経絡治療・臨床編』 (経絡治療学会)

      『伝統鍼灸治療法』 (池田政一)